2年ぶりの営業面談
2年間勤めた派遣先を雇止めとなり、2年ぶりに営業面談に行くことになった。
ある時期になると、すごい勢いで営業担当から電話がかかってきた。
あっちへ行け、こっちへ行けと1日4件、5件と営業に行かされる。
大部分が業務内容が経歴と合わず、嫌な思いをして帰ってくる。
2年間、片道2時間の通勤を続けて、大変だったので、できれば片道1時間くらいの派遣先で働きたいと考えていた。
そのときの自分は2年前の自分と比べて、業務経験以上の大きな武器があった。
電験三種という資格だ。
この資格を取ったというよりも、何が何でも取ってやると思ったのは、2年前の営業面談での経験からだ。
「いろいろ資格を持っていますね。でも、電験もっていませんね」
そこではファームウェアの技術者を探していたようなので、関係ない資格のはずなのだが、雑談的に言ってみたのだろう。
電験を持っていたら、電気設備の会社で働けるので、そもそも派遣会社で働いていないだろうに。
電験三種を取ろうと強く思った瞬間だった。
派遣社員の客先単価
派遣社員には客先単価というものが存在する。
技術の社員だと、最低でも1日3万円くらいの単価になる。
本人の時給が2千円だとすると、10時間働くとすると、2万円になる。
3万円から2万円を引いたお金が、派遣会社の営業や事務の社員の給料となる仕組みだ。
派遣社員の単価については、自身が知ることはできない。
会社がどれほどのマージンを取っていることがばれてしまうので、教えてくれないのだ。
ある日、自分の単価を偶然知る機会があった。
別の派遣会社の社員が「ここに書いてありますよ」と教えてくれた。
部署の経費を管理している台帳にあったのは、まぎれもなく自分の単価だった。
その金額は、一ヶ月70万円。
すなわち、会社には年間840万円が入ることになっている。
一方、自身の年収はせいぜい450万円なので、マージン率は46%となる。
一般的に、特定派遣と呼ばれていた派遣社員の場合、40%程度と言われているが、それを大きく上回る数字だった。
派遣社員の悲しい現実を知った瞬間だった。
営業面談の楽しみ
派遣社員の営業面談はあまり気分のいいものではない。
下に見ているメーカーの社員と話をしなければならないからだ。
「この経験はないの?」、「この資格はないの?」と、すべて自分の価値基準で話を進めてくる。
そんな経験もあって、そんな資格があったら、最初から派遣社員にはなっていない。
だが、楽しみもある。
それは、若い女性の営業社員といっしょに行動できることではなく、新入社員を同行できることだ。
新入社員を研修も兼ねてベテラン社員の営業面談に連れていくのだ。
営業社員は自身で育てることができないので、先輩社員を見せて教育するのだ。
営業面談の合間に、新入社員と人生設計について話すのが楽しい。
設計がやりたいとかお金を稼ぎたいとか、いろいろな声を聴いた。
でも、どちらも派遣会社に勤めていたら実現できないこと。
自分はもともと派遣会社勤務ではないので、客観的に派遣会社を冷めた目で見ている。
あくまで夢を壊さないように、目標を失わせないように、気を使いながら話すのだ。
電験三種
契約社員から派遣会社勤務の間にいくつか資格を取得した。
情報処理関連の資格が多かったが、電気・通信関連の資格も取得した。
そのうちの一つが第三種電気主任技術者、通称、電験三種と呼ばれる資格だった。
この資格は何かというと、電気設備の管理監督者の資格で、一定以上の電気設備を持つ事業所には必須の国家資格だ。
そのため、この資格の価値は非常に高い。
この資格を取得するためには、4科目の試験を受けてすべてに合格しなければならない。
多少の苦労はしたが、電気の学科を出ているので、何とか取得することができた。
派遣先を雇止めになったり、転職活動をするのに役立つだろうと考えて取得した資格だった。
電験三種を取得後は、スキルシートにもきちんと書いて営業活動をすることにした。