会社を辞める日
若い頃はあまり意識しなかったが、新卒で入社した会社、次に働いた会社を辞める日は、本当に悲しい気持ちになった。
いずれの会社も、社員証がなければ入ることすらできない会社なので、一度、社員証を返却してしまえば、二度と会社に来ることはない。
会社を辞める日にやることは一つ。
午前中はデータの移し替えや他の社員への引き継ぎ、午後は机やパソコンの返却などだ。
パソコンを閉じてしまうと、もうやることがないので、椅子に座ってひたすら定時になる時間を待つ。
定時になったら、周りの社員に挨拶をして、最後の別れを告げる。
契約社員だった会社を退職したときは、建物の前まで職場のみんなが見送りにきた。
そのうちの一人(20代後半の男)が、手を振ったときに、泣き始めてしまった。
そのまま振り返ることもせず、工場の門まで行き、社員証をリーダー社員に返却して、握手をして別れた。